ToDoリストはビジネスパーソンの必須ツールと言われてきました。確かにやるべきことを列挙して消化していくというスタイルはわかりやすく合理的です。
しかし、「ToDoリストの約半分は未達成のまま終わる」「終わったタスクのうちToDoに最初から記載されていたタスクは20%未満」という結果からわかる通り、どうやらToDoリストは万能のツールとは言えない様です。
また、人間はできたことよりもできなかったことの方が記憶に残る(ツァイガルニク効果)傾向があります。つまりタスクの半分が未消化に終わるToDoリストは心理的な負担が大きいと言えます。
ワーカプレイヤー的にはToDoに追い立てられるよりもやりたいことを達成した姿を想像してモチベーションを維持したいですね。
もしあなたがToDoの運用に行き詰まっているならGTDとBJSMという比較的新しい時間管理ツールが役に立つかもしれません。
ToDoだけでも手がいっぱいなのに更に2つもツールが増えるなんて… って思いました?大丈夫です。BJSMもGTDもToDoのフォーマットが少し変わっただけですぐに導入できるので。この機会に一度触れてみてください。
GTD?BJSM?
GTDもBJSMも作業にとりかかる前に「やるべきこと」と「やりたいこと」を計画するためのツールです。
GTDはToDoに非常によく似ていて「やるべきこと」を列挙してから消化します。ToDoと比べると直近のタスクの物理的・心理的負担を軽減する工夫がされています。
BJSMはシステム手帳に似ていてスケジュールに予定を書き込みます。特徴的なのはスケジュールを書き込む前に1週間〜1ヶ月先の「やりたいこと」を列挙する点です。
両者は矛盾しない管理手法なので、両方を導入することもできます。著者の経験では最初の2週間はGTDで「やるべきこと」を消化して、余裕ができたらBJSMで「やりたいこと」を目指す様にするとスムーズに導入できます。
ToDoが行き詰る理由
GTDやBJSMを導入する前に、ToDoが行き詰る理由を理解しておきましょう。
ToDoが行き詰る理由は諸説有りますが、共通しているのは「計画性がない」ということです。
ToDoでは発生したタスクをその場でToDoリストに入れて期限を設定します。この運用の課題は以下の3点です。
原因1 必要性が考慮されていない。
例えば「やらなくてもよい2割の仕事のために5割弱の時間を取られている」という研究結果もあります。来た玉を打つだけのToDoではタスクの必要性が十分に考慮されていません。
原因2 実現性が考慮されていない
タスクが増えた際に「今すぐはできないからとりあえず週末を期限にしよう」という先送りを繰り返した結果、週末に抱えきれないタスクに襲われます。
なんとかリカバリーしようと終電まで仕事をした結果、翌日頭がぼんやりしてミスをしてしまう。するとミスをリカバリーするタスクがToDoに追加される…。そんな悪循環に陥ってしまいます。
原因3 受け身になってしまう
「やるべきこと」に追い立てられるストレスが続くと「こんな生活がこれから何十年も続くのか」といった憂鬱な気分になったり、自分から新しいことに挑戦しようという意欲を失ったりします。
こうなってしまうとToDo以前に仕事自体に拒否感を抱いてしまい、さらにタスクを消化できなくなってしまいます。
GTDとBJSMなら解決できるかもしれない
GTDとBJSMのどちらか一つ、または両方を導入することでToDoの課題を解決できるかもしれません。
即効性を求めるならGTD、公私ともに充実させたいならBJSMがお薦めです。
即効性のあるGTD。まずは頭の中をスッキリさせる。
GTDはGetting Things Doneの略で、「頭の中にある全てのタスクを吐き出してスッキリすることでストレスを無くす」というコンセプトでつくられています。
ぼんやりアレもやらなければ、コレもやらなければという不安を抱えて心から週末を楽しめない人や、日曜の夕方になると急に憂鬱になるいわゆる「サザエさん症候群」を抱える人に効果が有ります。
下図のとおりフォーマットはToDoリストに似ているので、ToDoリストを利用したことがある人であればすぐに導入できるはずです。
- 頭の中にある全てのタスクを「タスク」欄に書き出す。どんな些細なことでもOK。
- タスクが本当に必要か吟味して、やる/やらないの分類をする。ここで「やらない」に分類したものは「やらない」欄にチェックを付けて忘れてしまってもOK。
- 「やる」に分類したものはいつやるかを決める。今日できるものは「すぐ」欄にチェックをつけ、期限が明確なものは「期限」欄に期限を記載し、1週間以上先で期限も曖昧なものは「後日」欄にチェックを付ける。
- さらに、他の人に任せられるものは「任せる」欄に誰に任せるのかを記載する。
- タスクが追加になった場合は一旦タスク欄に記載しておき、手が空いた時に2〜4の仕分けをする。
- 週末または週初に期限の見直しをする。
ToDoと比べると「やらない」「他の人に任せる」という選択肢が増えています。これは自分の負担を軽減できるほか、明確に「やらない」と宣言することでそれ以上悩まくて済むのでストレスを軽減することができます。
また、「後日」という曖昧な期限を許容している点がToDoと異なります。これは無理やり期限を設定して「本当に間に合うかな?」という不安を「期限が決まっていないタスクがある」程度の記憶に留めることで心理的な負担を軽減する効果があります。
ちなみに著者の経験上、「後日」に分類されたタスクの半分は週末の期限の見直しで「やらない」に移行します。
やりたいことを実現できるBJSM。ポイントは抱え込み過ぎないこと。
BJSMはBullet Journal System Markingの略で、月ごと、週ごとにやりたいことを洗い出して、種類と重要度がわかる様にマークをつけてからスケジュールに記録するタスク管理方法です。
「いつ」「何をするか」を列挙している点はToDoと同じですが、ToDoはタスク志向であるのに対し、BJSMはスケジュール志向(計画志向)である点が異なります。
BJSMのフォーマットはシステム手帳のダイアリーの前に月次のページが1ページ追加されています。
月次のページは以下の様に「今月のイベント・タスク」と「来月以降のイベント・タスク」で構成されています。INBOX欄はGTDと併用するために著者が追加しています。
以下は日次のページです。月次のページ同様にイベント(○)とタスク(□)を日毎に記載します。
BJSMの手続きは以下のとおりです。
- 月初に月次ページを作成し、今月(または来月以降)のイベントとタスクを列挙します。このページは「やりたいこと」を忘れない(=モチベーションを維持する)ために作成します。
- 週初に1週間の日次ページを作成します。日次ページには日々のタスクとイベントを書き込みます。ToDoに相当する部分です。
- タスクが追加された時はすぐにスケジュール化せず、月次ページの「INBOX」欄に記載しておき、手が空いた時にやる/やらないの振り分けをして日次ページに記載します。GTDを活用すると良いでしょう。
- 月末、週末にタスクの漏れがないか、やりたいことを犠牲にしていないかチェックします。
月次ページは「やりたいこと」を記載できるので、例えば「このプロジェクトが終わったらご褒美に来月は温泉旅行」という希望を書くことができます。
日次ページは物理的に1日のタスクを書き込むスペースが限られているためToDoの様にスケジュールを無視して無制限にタスクが追加されることはありません。
本来のBJSMでは月次ページ、日次ページともに追加タスクが発生したらその都度追記します。しかしGTDでも説明したとおり自然消滅するタスクもあるため、著者は一旦INBOX欄に記載しておいて週末に棚卸する運用にしています。
コツは「ルールに縛られないこと」
GTDもBJSMも運用方法に多くのルールがあります。これらを全てを導入しようとすると実際の業務にそぐわなかったり、ルール疲労を起こしてしまいます。これでは本末転倒ですね。
今回ご紹介したのはGTDとBJSMの基本的な部分です。これだけでも十分に効果があるのですが、本格的に導入したい方はルールに縛られることなくご自身がやりやすい様にカスタマイズして下さい。
効果の程は…人次第?
著者がToDoにBJSMとGTDを取り入れて約1年が立ちました。
実感として仕事に追われることが極端に少なくなり、開いた時間をTOEICの勉強時間に割り当てることができるようになりました。また、友人からの遊びの誘いもほぼ断らずに参加できています。
月に1ページ、週に1ページの計画を立てるだけでこんなに変わるものかと(今までどれだけ時間を無駄にしたのだろう)と驚くばかり。
ただ、仕事の内容や立場によって全ての人に効果があるとは限りません。ご自身の仕事の状況に合わせて柔軟に取捨選択して使ってみてください。